訪問診療は、筋力低下や杖歩行、車いすの利用などで通院が困難な方に、医師が自宅や介護施設などで医療サービスを提供する仕組みです。高齢化に伴い、訪問診療のニーズは年々高まってきています。
ただ、訪問診療の利用時に医療保険と介護保険のどちらが適用されるのか、疑問に思っている方が多いのではないでしょうか。実際、訪問診療は医療と介護の両方の役割を担っている場合が多く、複雑に感じられることも少なくありません。
本記事では、訪問診療で適用される保険の種類と、介護保険が使われる場合について解説します。おおよその費用もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
なお、訪問診療の仕組みや対象となる方について、以下の記事でもご紹介しています。
▶ 訪問診療とは
医療保険と介護保険の違いとは?
訪問診療を利用する方の多くは高齢者です。そのため、診療にかかる費用は医療保険と介護保険のどちらで賄われるかが分かりにくい傾向にあります。
ここでは、医療保険と介護保険の違いについて解説します。
医療保険は「医療サービス」にかかる費用の一部を負担してもらえる
医療保険とは、すべての国民に加入義務があり、通院や手術などの医療サービスにかかる費用の一部を負担してもらえる社会保険制度です。所得や年齢によって異なりますが、医療機関にかかる際に健康保険証を提示することで、医療費の自己負担額が1〜3割で済むようになります。また、医療保険には利用限度額がないため、限度額を気にせずにいつでも医療サービスを受けられる点も大きな特徴です。
医療費の負担額について、以下の記事でも解説しています。
▶ 訪問診療の料金について 目安と仕組み
介護保険では、要介護者が「介護サービス」にかかる費用の一部を負担してもらえる
すべての国民が加入している医療保険と異なり、介護保険は、40歳になってから加入義務が発生します。介護が必要になると、市区町村に要介護認定を受けるための申請をする必要があります。介護保険は、この要介護認定を受けた方が、介護に必要な費用を1〜3割の負担で受けられる仕組みです。
介護保険では、要介護認定者への生活支援や介護予防、介護器具の購入などが利用できます。介護保険は医療保険と異なり、要介護の区分によって1か月ごとに限度額が設定されている点が特徴です。つまり、限度額を超えた分については全額自己負担となる点に注意しなければなりません。
介護保険の対象について、以下の記事でもご紹介しています。
▶ 介護保険の対象について
訪問診療では医療保険が適用される
訪問診療では医療サービスを受けるため、利用には「医療保険」が適用されます。医療サービスとは診察や治療、検査などです。
訪問診療の利用において、要介護認定は必須条件ではありません。必ずしも要介護認定を受けている必要が無いため、訪問診療の利用には介護保険ではなく医療保険が適用されるのです。
医療保険が適用されるメリットとして、訪問診療を利用しても「介護保険の限度額を逼迫しない」ことが挙げられます。前述のように、介護保険には区分によって1か月当たりの利用限度額が設定されていることが特徴です。そのため、要介護認定を受けている人は介護保険の管理に気を付けなければなりません。
しかし、訪問診療で実際に利用するのは限度額が無い医療保険であるため、介護保険の利用上限を気にすることなく、安心して利用できます。
実際にかかる金額は、自己負担額や病気の状態によって異なります。詳しくは以下のページをご覧ください。
▶ 費用・エリア
要支援/要介護の方のみ、居宅療養管理指導が追加で適用される
訪問診療では医療保険が適用されることをご紹介しましたが、要支援や要介護に該当する方は「居宅療養管理指導」が追加で適用されます。
居宅療養管理指導は、診察や治療などの医療サービスではなく介護サービスに分類されるため、介護保険の適用となります。
また、居宅療養管理指導は訪問診療と組み合わせて利用される場合がほとんどです。
居宅療養管理指導では「健康の管理や指導」を行う
居宅療養管理指導は、医師や薬剤師などが患者様を訪問して健康管理や指導を行うものです。医師であれば療養の仕方の指導、薬剤師であれば服薬指導や管理など、あくまでも健康管理とアドバイスが主なサービスです。 居宅療養管理指導を受けられるのは、「要介護1〜5」に認定されている65歳以上の高齢者です。 一方で、「要支援1、2」に認定されている方は、介護予防居宅療養管理指導が適用されます。また、それぞれの適用には他に下記のような条件も設定されています。
- 月に1回以上、訪問診療を利用している
- ケアマネジャーへ定期的に診療情報を提供している
また、居宅療養管理指導は訪問限度回数が設定されていますが、限度回数の範囲内であれば1〜3割の自己負担で利用可能です。実際の自己負担額は、同じ建物内の利用人数や訪問する職種によって細かく変動します。例えば1割負担の場合は、1回あたり299円、月最大598円ほどです。
訪問診療で医療保険を使った適切な療養計画を
訪問診療では医療保険が適用されます。そのため、訪問診療を導入することで、その他介護サービスにかかる介護保険の点数が逼迫することはないため、安心して訪問診療の利用を検討してみてください。
なお、訪問診療とあわせて医療従事者からアドバイスを受ける居宅療養管理指導を併用する場合が多いですが、併用する場合は追加で介護保険が適用されます。
より適切な療養ができるように、不明点が出た場合はかかりつけの医療機関や担当のケアマネジャーと今後の療養生活について相談して決めることをおすすめします。 当ブログを運営している横浜ホームクリニックは、訪問診療に特化したクリニックです。専門医が9名在籍しており、質の高い医療を提供しています。紹介状不要・お電話1本で訪問いたしますので、お気軽にお問合せください。
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